部会長挨拶
「エネルギー学」部会 部会長挨拶
山本 博已(東北大学 東北大学工学研究科電気エネルギーシステム専攻 客員教授)
2025年4月から「エネルギー学」部会の部会長を拝命しました。私にとっては、2021年から2023年のバイオマス部会長のあと、2年ぶりの部会長になります。
「エネルギー学」部会長就任のタイミングで、本稿の執筆機会を頂きましたので、あらためて、「エネルギー学」や「エネルギー学」部会について考えたいと思います。
まず、「エネルギー学」の中心になる、エネルギー工学の定義を紹介します。K. Gallagher et al. "Energy-Technology Innovation"によれば、「エネルギー工学は、工学の多分野にわたる分野であり、世界のエネルギー需要の増加に対応するため、エネルギーシステムの最適化、再生可能エネルギー技術の開発、エネルギー効率の向上を目的としています。」「エネルギー工学は、最も最近出現した工学分野の一つであり、気候変動、二酸化炭素削減、化石燃料から再生可能エネルギーおよび持続可能エネルギーへの移行といったグローバルな課題に対応する上で、重要な役割を果たしています。」
定義によれば、エネルギー工学の目的は、わが国の目標である3E(安定供給、経済効率性、環境適合)と共通しています。エネルギー工学は、日本エネルギー学会の部会活動(石炭から消費者行動まで)を含むと考えられます。このため、本学会の「エネルギー学」部会は、エネルギー工学の中で、他部会との協力により、様々なエネルギー源やエネルギー関連技術を含めた、エネルギーシステムの最適化を対象とすることになります。
また、「エネルギー学」は、エネルギー工学以外に、エネルギーに関連する自然科学以外の分野である、エネルギー心理学、エネルギー歴史学、エネルギー社会学、エネルギー政策学、エネルギー経済学などを含みます。エネルギーの諸問題の解決のためには、自然科学だけでなく、人文・社会科学と融合した分野である「エネルギー学」が必要とされます。
ここまできて、日本エネルギー学会誌・創立80周年記念特集号での「エネルギー学」の定義の「エネルギー問題を総合的視点で捉え、工学・理学などの自然科学から哲学、文化人類学、社会学、経済学等の人文・社会科学まで多種多様の分野を包括しうるような俯瞰する知としての新しい学問です。」にたどり着きました。日本エネルギー学会では、 2001年日本学術会議の「エネルギー学」に関する最終検討結果を踏まえて、同年に「エネルギー学」研究会が発足し、 2007年に「エネルギー学」部会が設立されて、現在に至っています。
「エネルギー学」部会は、「学融合」、「エネルギー教育」、「エネルギー政策」をテーマとする三つの分科会で構成され、 学融合に立脚したエネルギー・環境教育の普及と実践、持続可能なエネルギー・環境政策の提言に向けて、活動しています。「エネルギー学」部会でも、私を含めて自然科学系のバックグラウンドを持つ会員が多いことから、学融合を意識的に進めていきたいと思います。今後とも、部会横断・学融合を推進していきますので、「エネルギー学」部会の活動へのご参加・ご協力をいただければ幸いです。
えねるみくす 2025年3月号「随想」を転載
歴代部会長、沿革・設立までの経緯
沿革・歴代部会長
| 沿革・歴代部会長 | ||
「エネルギー学」研究会が発足 歴代部会長[2025年現在の所属] 初代会長(2007年~2010年):山地憲治 [地球環境産業技術研究機構(RITE)理事長・研究所長, 東京大学名誉教授] 2代目会長(2011年~2013年):内山洋司 [日本エレクトロヒートセンター会長,筑波大学名誉教授] 3代目会長(2014年~2016年):坂西欣也 [産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域長補佐] 4代目会長(2017年~2021年):秋澤 淳 [東京農工大学 大学院工学研究院 教授] 5代目会長(2021年~2024年):岡島敬一 [筑波大学 システム情報系 教授] 6代目会長(2025年~現在):山本博已 [東北大学 工学研究科電気エネルギーシステム専攻 客員教授] | ||
設立までの経緯
| 部会設立までの経緯 | ||
| 1997年に片岡会長は、今後当会が取り組むべき分野として「エネルギー学」を提言されました。それ以来「エネルギー学」は重要課題として会長に引き継がれ、2000年5月に審議を終了した日本学術会議の 「エネルギー学」に関する最終検討結果報告を受けて、当学会は「エネルギー学」に関連する具体的な活動に着手しました。 2001年6月に開催された定例理事会にて「エネルギー学研究会」の発足が承認され、 本格的な活動をスタートすることになりました。 そして、これまでの研究会活動の成果として、2006年11月の定例理事会にて「エネルギー学」部会の発足が承認されました。 |







