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部会長挨拶

第10代バイオマス部会長 山本 博巳(一般財団法人電力中央研究所) 2021.4~

この度、東北大学の中田俊彦教授の後を受けて、バイオマス部会の第10代部会長を務めさせていただきます。2年間よろしくお願いします。
わが国は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明しました。カーボンニュートラルは、もともとはバイオマスを適切に管理して利活用するときに、バイオマス生育時の大気からバイオマスへのCO2吸収量と、バイオマスエネルギー利用時のバイオマスから大気へのCO2排出量がつりあうことを意味する用語でした。バイオマス用語であったカーボンニュートラルが、エネルギー全体のカーボンニュートラルとして用いられることに、驚きと発想の転換の必要性を感じます。カーボンニュートラルを目指す上で、大気からのCO2吸収というバイオマスの特性が重要になります。前述の通りバイオマスは、エネルギー利用すればカーボンニュートラルなエネルギー源になりますし、吸収したCO2を継続して固定すればCO2吸収源になります。航空燃料などエネルギー転換が困難な部門では、バイオマスを原料とするカーボンニュートラル燃料の重要性が高まっています。バイオマス利活用で実現されるカーボンニュートラルを、全エネルギーシステムのカーボンニュートラルへと、着実に拡大していく必要があります。部会員の皆様と共に、カーボンニュートラルを目指してのバイオマス利活用を考えていきたいと思います。
1999年のバイオマス部会の立ち上げから20年以上が経過し、日本エネルギー学会バイオマス部会は、部会員数1500人を超える日本最大のバイオマス学の拠点となりました。横山伸也初代部会長以来の歴代部会長の皆様、歴代および現在の部会事務局と学会事務局の皆様、バイオマス科学会議、アジアバイオマス会議、学会大会のバイオマス分野、バイオマス夏の学校、バイオマス合同交流会など部会行事に積極的に参加していただいている部会員の皆様のおかげです。深く感謝を申し上げます。第10期のバイオマス部会事務局の体制においては、1999年のバイオマス部会の発足以来20年以上に渡り部会幹事を務められた広島大学 松村幸彦 教授(第8代バイオマス部会長)から、三重大学 野中寛 教授へ、部会幹事が引き継がれました。松村教授には今後も事務局メンバーとして強力な応援をいただきます。部会の幹事、事務局、部会員の皆様など、バイオマス部会に関わる皆様の協力をいただき、わが国のバイオマス利活用の推進とバイオマス部会発展のために私も微力ながら貢献したいと考えます。ご指導ご鞭撻よろしくお願いします。

2021年4月吉日

第9代バイオマス部会長 中田 俊彦(東北大学大学院工学研究科) 2019.4~

拝啓 春暖の候 皆様にはお健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます……と書き出しができない深刻な社会情勢のなかで、ご挨拶の遅延をお詫びいたします。
 ニューノーマルに向けた社会のリフォームと、その後の社会におけるエネルギー需給システムを考え始めています。エネルギー事業系の会員の皆様には、緊張感溢れる日々の業務運営に加えて、変化する需要家データの分析から新たな示唆を感じ取っていることと思います。
 さて、エネルギーの利用形態(エネルギーキャリア)は、電力、熱、輸送用燃料の三種です。国の総合エネルギー統計(経済産業省資源エネルギー庁)を需要家側からみると、エネルギー消費量はキャリア別に電力(3.33 EJ)(エグザジュール、10の18乗)、熱(7.76 EJ)、輸送用燃料(3.25 EJ)であり、最終エネルギー消費量に占める割合は、大きい方から熱54%、輸送用燃料23%、電力23%の順です。つまり、エネルギー利用者の視点に立てば、熱が過半を占めるので、この熱エネルギー利用のリフォームに、バイオマス利活用に基づく持続可能なゼロカーボン社会への切り札が隠されています。
 ここでは、そのひとつである系統立てた熱利用システム、つまり地域熱供給システムが日本では普及しなかった原因を挙げました。
 1.熱供給事業法(1972)と熱供給事業法施行規則(1972)では、熱供給事業の定義としてボイラー等加熱能力を21 GJ/h以上と定めています。これは熱出力75,600 kWhに相当するので、山形県最上町や岩手県紫波町で始まったコミュニティー単位の中小規模の家庭向け地域熱供給システムは対象に含まれず、その実態を客観的に把握できていません。
 2.総合エネルギー統計における熱のデータは、上記の熱供給事業法による認定事業に基づいて集計しますので、データ捕捉が一部に留まります。さらに、火力発電所の排熱、ゴミ焼却場の排熱など、欧州で主流の排熱由来の熱エネルギーを統計ではすっかり無視しています。
 3.全国に1741ある地方公共団体には、エネルギー統計が存在しません。エネルギーの生産、流通、消費に係る信頼性のあるデータがないし、公式統計があっても、その信頼性と精度はとても低いです。都道府県別エネルギー消費統計(経済産業省資源エネルギー庁)の精度も低いです。
 4.地方公共団体の多くは、エネルギー関連政策に関する優先順位が低いために、専門職員はおろか、問題意識と分析能力ある担当者すら不在です。経済産業省では、自治体に対する意識啓発から取り組んでいる状況ですが、まだまだ理解度は低いです。
 5.熱エネルギーシステムの高等教育が欠けています。私自身は、東北大学工学部機械工学科(熱及び熱力学講座)の卒業生ですが、地域熱供給について知る機会はまったくありませんでした。教科書に記載もなく、自力で英文の資料読解や、海外フィールド調査で見聞を得るのが唯一の学びでした。
 日本は、年間の一次エネルギー総供給量18 EJのうち、約54パーセントの9.93 EJを排熱として大気や海洋に放出しています。そもそも棄てていますので、この一部を熱エネルギーとして利用できればお得です。その結果、総合エネルギー効率が向上し、CO2排出量が低下し、化石燃料輸入に要する年間24兆円の費用を毎年削減し、結果として地域経済の新たなマーケットと活動を創出できます。
 地域熱供給システムは、単に排熱利用に留まらず、エネルギー需給システムの複層化を意味します。現在の、単線で一方通行のエネルギー供給が、複線で双方向化し、さらに遠隔を結ぶグリーンな新幹線が加わるのです。再生可能エネルギーの間欠性電源の受け皿として、水素に加えて熱が加われば、自然界の変動成分を吸収し調整して需要家が有効に活用できます。脱炭素社会に向けた持続可能なエネルギーシステム設計にて、重要な役割を担うことでしょう。ニューノーマルとは、明治維新以降すっかり忘れたことを姿を変えて取り戻す、そんな時代かもしれません。
 
2020年4月吉日

第8代バイオマス部会長 松村 幸彦(広島大学大学院工学研究科) 2017.4~

 この度、東京大学の鮫島正浩氏の後を受けてバイオマス部会の第8代部会長を務めさせていただきます。皆様には、バイオマス部会の立ち上げの時から幹事としてお世話になってきました。1999年の立ち上げの時から、2017年で18年が経つことになります。この間、横山初代部会長に始まる7名の部会長にはそれぞれに部会の発展を担っていただきました。バイオマスをめぐる状況も大きく変わり、バイオマスニッポン、バイオエタノール、固定価格買取と政策も移り変わっています。その中で、バイオマス部会もハンドブックの出版協力、メーリングリストでの情報発信、科学会議の運営、アジア科学会議の立ち上げ、夏の学校、合同交流会など、多くの活動を行ってきました。その上で、バイオマス部会の発展を考えたときに、学会との関係、部会員へのサービスという2つの観点で、より活動を整理していく必要があるように感じています。
 
 学会との関係では、部会員が学会員の数を超えようとしている状況があります。学会のご理解をいただいて、様々な分野からの参画をいただくために、 学会員でなくても部会には無料で参加いただける運営をしています。しかしながら、近年、学会の運営が財政的に厳しい状況があり、学会に入ってもら えないのはなぜか、科学会議、アジア科学会議で収益を上げられないか、という声も強まっています。たしかに学会あっての部会ですので、学会員への充実したサービスを追加して行うことで、学会員の数を増やしていくような協力は必要かと思います。もちろん、現在の部会員へのサービスを低下させない形で進める必要があります。
 
 部会員へのサービスとしては、学術的な知見の提供とアジアへの展開の充実を進めるべきと考えています。日本エネルギー学会バイオマス部会がほかのバイオマス関連の団体と異なるのは学術をベースにして展開している部分です。逆に言えば、学術的な知見をしっかりとまとめて発信していく必要があるかと思います。すでにハンドブックやプロセスハンドブック、用語集などの出版はしていますが、教科書的な出版物やより深い知見まで得られる書籍などのニーズはあるかもしれません。また、アジアへの展開が進んでいますが、英語での情報発信はまだ充実させる余地があるように思います。
 
 これらの状況を踏まえて、これまでの部会長に恥じない部会運営に努めてまいります。皆様のご支援、ご協力をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
2017年4月吉日

第7代部会長 鮫島 正浩(東京大学大学院農学生命科学研究科) 2015.4~

 この度、森林総研の山本幸一氏の後を受けてバイオマス部会の第7代部会長を拝命いたしました。そこで、挨拶を書くに当たって部会のホームページをまず一読させていただきましたが、まず驚きましたことは、本年4月13日現在、部会メンバーの総数がなんと1034名であると知ったことです。これは大変な人数です。さらに人数だけではなく、産学官民の様々な立場と分野の方々によって部会が構成されていることにも目を見張らされました。あらためて「バイオマス」というキーワードが持つ不思議な力と繋がり、さらに与えられた責務の重さを強く感じ取っている次第です。
 
 バイオマス部会のホームページには歴代の部会長挨拶も掲載されていますが、これを時系列的に読んで行きますと、部会の歴史とそれぞれの時代との関わり合いを良く理解することができます。バイオマス部会が立ち上げられたのは1999年と聞いておりますが、その年には、米国のクリントン大統領がバイオマスのエネルギー利用を国の重要な戦略とする大統領令を発しております。初代会長の横山伸也先生が日本エネルギー学会の中にバイオマス部会を発足させましたことは、まさに時宜を捕らえた対応と言えるかと思っております。その後、我が国でも、2002年にはバイオマスニッポン総合戦略が打ち立てられ、バイオマス利活用の推進に向けた研究開発や実証事業等が盛んに行われるようになりましたが、この様子は第2代部会長の山地憲治先生(2005年)や第3代部会長の坂志朗先生(2008年)のご挨拶から読み取ることが出来ます。また、第4代部会長の堀尾正靱先生(2009年)のご挨拶では、我が国の国土の67%を占める森林から得られる木質バイオマスのエネルギー利用に基づく地域の活性化を例に取り上げ「社会のための科学」としてのバイオマス利用研究の位置付けを掲げておられます。一方、第5代部会長の坂西欣也先生の東日本大震災直後のご挨拶(2011年)では、必ずしも社会還元が十分に進んでいないバイオマス利用研究に対する政策見直し、そして再生可能エネルギーの電力固定買取制度の導入に向けた対応等、バイオマス利活用がいよいよ社会の現場と向かい合わなければならない時代になったことが読み取れます。これを受けて、第6代部会長の山本幸一先生のご挨拶(2013)では、固定買取制度と森林資源のバランスの取れた利用のあり方や震災復興の中でのバイオマス利用のあり方を考えて行く場としてバイオマス部会を位置付けております。
 
 さて、前置きが長くなりましたが、第7代部会長に就任するにあたって、簡単に自己紹介をさせていただきたく思います。この10年程は第二世代のバイオエタノール生産に関する技術開発研究を行ってまいりましたので、多くの方々からはそちらのほうで私を認識されているかもしれませんが、そもそもの私の専門分野は木材をはじめとする森林資源の総合的な利用を考えて行く林産学です。このような立場から、森林資源利用の先進国であるスウェーデン、フィンランド、そしてオーストリア等での木質バイオマスのエネルギー利用に関する現場も見させていただく機会がありましたので、その中で特に印象に残っていることを一つだけ紹介させていただきます。10年程前、スウェーデンのベクショーにある木質バイオマス発電所を訪問した際、当時の所長でありましたUlf Johnsson氏から木質バイオマス利用推進にために必要な3つのポイントを教えていただきました。それは、1)まずビジネスとしての事業として成立していること、2)次に地域住民が恩恵を受けていること、3)そして環境適合性があること、だそうです。そもそもビジネスとして成立する見込みのないものはやってはいけない、と言うのです。また、バイオマスは地域の資源ですので、地域住民が恩恵を受けていないと持続性が担保されないということかと思います。さらに、環境適合性はバイオマス利活用においては必須なのですが、これはあくまで評価として行うものであり、動機として先に持って来るものではないということも理解させていただきました。彼から受けた言葉は、その後、私の脳裏にずっと残っているのですが、皆様はどう受け止められますか。バイオマス部会の中でも、折に触れて、このことについては議論をしていきたいと思っています。さらに、彼から言われたもう一つのことは、「始めたら長く続けなさい」ということです。「何年くらい」と問い返したところ、「まずは20年」という答えが返ってきました。バイオマス利用は農業や林業と非常に密接な関係がありますので、これが物事を考えるための一つの時間的スパンと受け止めるべきかもしれません。
 
 バイオマス利活用の適切な推進は、我が国、特にそれを支える地方の将来にとって大きな役割を担っているかと思います。また、その中で、バイオマス部会には、そのための研究討議の場として多くの方が大きな期待を寄せていると認識しています。それに応えるべく、部会の活動を通して引き続き発展させて行きたく存じておりますので、何卒、皆様のご協力とご支援を賜りたくお願い致します。
 
2015年4月吉日

第6代部会長 山本 幸一((独)森林総合研究所) 2013.1~

 この度、産総研の坂西欣也氏の後を受けてバイオマス部会の第6代部会長を拝命した森林総研企画部の山本です。挨拶を書くに当たって、部会のホームページをしっかりと読み、部会誕生が1999年まで遡ることを知りました。また、「バイオマスハンドブック」、「バイオマス用語辞典」、「バイオマスプロセスハンドブック」の出版や、「バイオマス夏の学校」、「バイオマス科学会議」、合同シンポジウムの開催や関連学協会との交流など、部会の活発な活動に改めて目を見張りました。
 
 バイオマス部会発足の目的として、初代部会長である当時の産総研・中国センター所長の横山伸也氏は、“バイオマスの活躍の場を大いに広げて行くために、バイオマスに少しでも関連のある研究やビジネスを行っている方に、積極的に部会に参加して頂きたい”旨の言葉を挨拶の中に記しています。バイオマス利活用による地球温暖化問題への貢献や新エネルギー創造といった背景は今も変わりませんが、それから10数年が経過し、震災による原子力発電所事故の深刻な影響もあり、バイオマスがより身近なものになっていると思います。
 
 ここで簡単な自己紹介をします。大学時代は、木材組織学をしていましたが、30才で森林・林業・木材産業を研究の対象とする森林総研に入り、木材保存(長持ちさせる)の仕事に携わっていました。50才頃から木質バイオマスや海外の人工林資源に関するプロジェクトに関わり、バイオマスの世界に入ったのです。そして、2012年3月に東北支所で定年を迎え、現在に至っています。
 
 さて、第4代部会長堀尾正靱氏の挨拶には、“バイオマスの主力である木質系資源が、林野という形で国土の67%を覆う形で存在しているにもかかわらず、林業が危機に陥りつつある”ことが述べられています。この危機を受けて2009年には「森林・林業再生プラン」が打ち出され、2012年にはバイオマスを含む「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が導入され、林地残材等の未利用木質バイオマス資源の有効利用の進展が図られつつあります。本制度と森林資源のバランスの取れた利用のあり方や、震災復興とバイオマスなどの課題を、幅広い部会員がいる本部会の中で考えて行きたいと思います。
 
 前部会長の挨拶(2011年4月)には500名を超えると記された部会員数が、2013年1月には873名となっています。バイオマス部会には、多くの方々の期待が掛かっているのだと思います。国民の期待に応えるべく、バイオマス研究を部会活動を通じて更に発展させ行く所存ですので、皆様方のご支援を宜しくお願い致します。
 
2013年1月吉日

第5代部会長 坂西 欣也((独)産業技術総合研究所 バイオマス研究センター長) 2011.1~

 2011年1月より堀尾正靱先生の後を受けてバイオマス部会の第5代部会長を拝命した坂西です。
 まず、この場をお借りして、この度の東日本大震災に被災された会員及びご家族の皆様に、謹んで衷心よりお見舞い申し上げます。今回の大震災では、東北・北関東地域での大地震・大津波の被害に加えて、福島原子力発電所事故の影響が深刻な状況となっており、改めて人類が直面しているエネルギー環境問題におけるバイオマス、太陽光、風力等の自然エネルギー高度有効利用の重要性を痛感しております。特に、バイオマス部会メーリングリストでも活発に議論されておりますように、災害地で多量に放置されている廃材等のバイオマス資源をその場で高効率に利用できるシステムの構築が如何に喫緊の課題であるかを再認識させられました。今後夏に向けて東京を中心とした関東地域の電力不足による計画停電が予想される中、産学官民一丸となった節電・省エネへの取り組みは日本全国に波及しているものの、このような非常時にこそ、原子力や化石資源に依存し過ぎた現代文明のあり方を見直し、真に持続可能な地域分散再生可能エネルギー循環システムの構築を目指す好機と捉えるべきではないかと考えます。
 
 私は、これまで日本エネルギー学会の前身である燃料協会(主として九州大学)時代から、主として石炭液化やクリーンコール・コークス製造技術や重質油アップグレーディングに関する研究開発に携わっておりましたが、1999年に資源環境技術総合研究所へ移籍し、2001年の省庁再編時に産業技術総合研究所が再スタートしたのを契機に、初代バイオマス部会長であった横山伸也先生(東大名誉教授、現鳥取環境大学教授)のご指導の元、持続可能なバイオマスエネルギーの研究開発に転身致しました。2003年に産業技術総合研究所・中国センター(当時呉市)に設立された循環バイオマス研究ラボに参画し、2005年から現在のバイオマス研究センターにおいて、特に日本に豊富に存在しながら殆ど有効利用されていない林地残材や間伐材等の木質バイオマスから、硫酸等を用いない低環境負荷の前処理(水熱・メカノケミカル処理)技術・酵素糖化・エタノール発酵や高効率BTL(Biomass to Liquids)トータルシステム開発によるクリーンバイオ燃料の製造研究に注力しながら、国内外で持続可能で、かつ環境性・経済性に優れたバイオマス利用システムの評価技術の研究開発等を実施しております。
 
 今後のバイオマス利用の推進に向けて、昨年12月にバイオマス活用推進基本計画が閣議決定され、都道府県または市町村における「バイオマス活用の推進に関する計画」(10年間)の策定が目指されていますが、本年2月の総務省行政評価局による6省庁のバイオマス関連事業(214事業)「政策評価」において「バイオマス・ニッポン総合戦略」とバイオマス利活用に関する政策に従って実施された事業に対して厳しい査定がなされ、決して順風満帆とは言える状況ではありません。また、昨年の太陽光発電に加えて、今年度はバイオマス発電や風力発電等への固定買取制度の導入が検討されており、国内の木質バイオマス等の未利用資源の有効利用が一気に加速されることが期待される一方で、電力事業者等による木質バイオマス等の不当な収奪につながることも危惧されている状況です。
 
 日本エネルギー学会バイオマス部会では、前部会長の堀尾先生のリーダーシップにより、温暖化対策と地域のエネルギー自立や農林業の再興等に向けた指針が示され、温暖化対策に関するエネルギー収支や温室効果ガス排出削減のLCA・経済性評価、あるいは生物多様性、リスク管理等に基づいた社会受容性とバイオマス普及に向けた課題と研究のあり方の関係を厳しく吟味する部会活動を実践してきました。
 
 今後はさらに、部会員500名を超える日本エネルギー学会最大の部会として、他の関連部会や学会等とより密接に連携しながら、今年次大会のバイオマスセッション、バイオマス夏の学校、バイオマス科学会議等の一連の部会活動をより一層充実させると共に、部会としてのホームページ、メ-リングリスト等を活用して国内外のバイオマス関連研究者との国際的な議論の場を提供して行きたいと考えています。特に、アジア地域における持続可能なバイオマス利活用の方向性をテーマにしたバイオマス科学会議等での意見交換や人材交流を推進し、日本だけでなくアジア諸国や他の海外バイオマス研究者とのネットワーク構築や情報発信につなげたいとも希望しています。まだ未熟な部会長でありますので、部会の皆様の忌憚の無いご意見や叱咤激励を積極的に取り入れながら、今後のバイオマス部会のさらなる発展に精一杯尽力する所存です。
 
 部会員の皆様の益々のご活躍を祈念しつつ、より一層のご指導・ご鞭撻をお願い申し上げて、部会長の挨拶とさせて戴きます。今後とも、宜しくお願い致します。

2011年4月吉日
 (部会長としての任期は2011年1月より開始)

第4代部会長 堀尾 正靱(東京農工大学名誉教授,科学技術振興機構社会技術研究開発センター(領域総括)) 2009.1~

 皆様こんにちは。2009年1月から、坂 志朗先生の後を受けてバイオマス部会の第4代部会長を拝命した堀尾です。
 私は、バイオマスにかかわること約10年ですが、その前は、石炭利用技術(流動層燃焼・流動層/噴流層ガス化)、廃棄物燃焼・ガス化、流動層造粒、離散粒子シミュレーションなどの研究を行っていました。すでに1990年代の初めに、私のヨーロッパの石炭研究の友人たちは、EUの方針転換により、それまでの装置を使ってバイオマスの燃焼やガス化の実験を始めていました。しかし、私には、バイオマスは、アルカリの問題を除けば、石炭よりもはるかにきれいであり、エネルギー利用としてあえて研究をする必要はそれほどないのではないかと思っていました。(石炭の場合でも、その複雑性に魅せられた液化研究が盛んでしたが、1973年以来のエネルギー危機を乗り切るためには、むしろ石炭の燃焼に関する研究が重要であったことはその後の経緯が示すとおりです。)
 
 バイオマス研究に参加する気になったのは、バイオマスの主力である木質系資源が、林野という形で国土の67%を覆う形で存在しているにもかかわらず、林業が危機に陥りつつあること、財政投融資に伴う林野庁の赤字が、一時は4兆円近くなっていること、などを知ってからです。ささやかながらバイオマスのエネルギー利用技術を介して、国土や、中山間地の人々のこれからの問題に寄与することができるのであれば、これまで、工場ならばほぼ何処にでも出かけることができた工学系の人間であっても、全国土を対象にし、国民と向き合えることになる、と感じたのです。
 
 2002年バイオマスニッポン総合戦略が出たとき、説明会や講演会には熱気がありました。そこでは、研究者の熱気に、地域活動をしている人やNPOの人々の持つ熱気が合流していました。バイオマス研究は、新しい地域づくりの話とつながっていたのです。私が感じていた、専門の閉塞感を打ち破る場としてのバイオマスという気分がそこには共有されているように思われました。
 
 日本エネルギー学会バイオマス部会も、そのような熱気の形成の中で2001年に設立され、分野横断と、専門家と市民が手を携える気風が伝統となっています。初代横山部会長、2代目山地部会長、3代目坂部会長のリーダーシップと、活動的で和気藹々とした若手役員の皆さんのご尽力により、バイオマス部会は500名を超える本学会最大の部会として、充実した活動を進めてきました。年次大会のバイオマスセッション、バイオマス夏の学校、バイオマス科学会議など一連の行事では、質問や議論も多く、部会としての出版活動もさかんです。
 
 さて、学術会議の「学術の動向」2009年1号でも議論されているように、科学研究においては、研究者の自由な興味に基づく「科学のための科学」を大切にしつつも、「社会のための科学」としての責務を果たしていかなければならないという課題があります。バイオマスニッポン総合戦略ももう6年以上になり、温暖化対策も、地域のエネルギー自立や林業の維持も、いよいよ正念場を迎えています。バイオマス部会にも、温暖化対策にかかわるエネルギー収支やCO2排出のLCA,あるいは経済性など、社会の課題と研究のあり方の関係を厳しく吟味しつつ、次の時代をリードしていくことが求められています。
 
 各種のセッションや、夏の学校、バイオマス科学会議、あるいは部会のホームページ、メ-リングリストなどの場を生かして、忌憚のない議論を積み重ね、活力のある楽しい研究環境を維持しつつ、国民的期待にこたえられるバイオマス研究を発展させていきたいと思います。皆様のご支援をいただければ幸いです。
 
2009年4月吉日
(部会長としての任期は2009年1月より開始)

第3代部会長 坂 志朗(京都大学 エネルギー科学研究科) 2007.1~

 2007年1月に、山地憲治先生の後を受けてバイオマス部会の3代目の部会長を拝命し、丸一年が経過いたしました。バイオマス部会の中間報告を兼ねて、ご挨拶を申し上げます。
 バイオマス部会が発足して早や9年目を迎え、この間、横山部会長、そして山地部会長の強いリーダーシップの下、バイオマス部会は大きく成長し、部会員数は2008年2月13日現在531名に達しています。部会の活動は内容的にも大変充実し、日本エネルギー学会の年次大会(バイオマスセッション)、バイオマス夏の学校、バイオマス科学会議など一連の行事、さらに、当学会内の関連部会や他のバイオマス関連学協会との交流、合同シンポジウムの開催などを通して、活発な運営がなされています。またメールを通しての部会メンバー間の交流、意見交換など、バイオマス研究者の相互交流が積極的に進められ、順調にバイオマス部会の事業が進められています。
 
 バイオマス部会の発足後、政府においても、総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会にて政策的に導入促進すべき新エネルギーとして“バイオマス”が認定され、内閣府では、“バイオマスニッポン総合戦略”が策定されバイオマスの総合的利活用が推進されるなど、バイオマスを取りまく政策が急速に充実してきました。そのような状況の中、ついに京都議定書での第一約束期間の初年2008年がスタートしました。それに伴い、政府における新エネルギー、特にバイオマスの利活用に対する動きがさらに活発化し、2007年末から「バイオ燃料技術革新協議会」が発足し、リグノセルロースからの国産エタノール生産に向けて経済産業省並びに農林水産省が動き出しています。さらに内閣府では、「バイオマス社会還元加速プロジェクト」にて、バイオマスの有効的利用に向けての方策の検討が始まっています。このような流れの中、本バイオマス部会においても受託調査や部員の協議会への参加等、政策推進に積極的に協力しているところです。
 
 海外へ目を向けると、地球温暖化防止に寄与し得るバイオマス利活用に向けて、アジア諸国における政策と情報収集を推進することで、アジアの環境保全を確立し農業パートナーシップを構築する農林水産省の受託事業が、アジア諸国との連携のもとに進められています。また、北米やヨーロッッパに向けては、国際エネルギー機関(IEA)クスク39部会(液体バイオ燃料)に参画するなど、国際的な視野からのバイオマスの利活用が本部会員を中心に進められています。
 
 今後も、バイオマス部会のホームページやメーリングリストによるタイムリーな情報交換をさらに充実させ、種々の部会活動を通して国内外に積極的にバイオマスの最新情報の発信、活発な活動の展開を進めていきたいと考えています。熱心かつ献身的な執行部事務局の支持を得て、バイオマス部会の更なる発展に向けて、今後も微力を尽くしてまいります。引き続き、皆様のバイオマス部会への積極的なご支援とご協力をお願い申し上げます。
 
2008年2月吉日
 (部会長としての任期は2007年1月より開始)

第2代部会長 山地 憲治(東京大学 工学系研究科) 2005.1~

 このたび横山伸也先生の後を受けてバイオマス部会の2代目の部会長を拝命いたしましたのでご挨拶を申し上げます。
 発足以来5年におよぶ横山部会長のリーダーシップの下で、バイオマス部会は大きく育ちました。部会員数は300名を超え、日本エネルギー学会の大会におけるバイオマスセッションは急速に充実し、ますます活発な議論が行われるようになりました。また、日本エネルギー学会内の関連部会や他のバイオマス関連学協会との交流も活発に行い合同シンポジウムなどを開催してきました。さらに、夏の学校の合宿研究会などで部会員間の親睦を深めるなど、「バイオマス研究者の相互交流を図るとともに、研究関連の情報の収集、発信を行ってその利便を図る」という部会の目的の達成に向けて順調に事業を進めています。
 
 バイオマス部会の発足後、わが国政府においても、総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会では政策的に導入促進すべき新エネルギーとしてバイオマスが認定され、内閣府はバイオマスニッポン総合戦略を策定してバイオマスの総合的利活用を推進するなど、バイオマス政策は急速に充実してきました。本部会も受託調査やメンバーの審議会参加等を通してこれらの政策推進に協力しています。また、当部会が中心となって出版した「バイオマスハンドブック」は広く活用されており、現在は中国語訳の話が進んでいます。
 
 これからも、ご好評をいただいているホームページやメーリングリストによるタイムリーな情報交換をさらに充実させるとともに、進行中のバイオマス用語辞典の編集・出版、研究発表の機会の充実・多様化、国際展開などを進めてまいりたいと考えています。幹事の松村幸彦先生をはじめとする熱心で献身的な事務局チームのサポートを得て、バイオマス部会の更なる発展のために微力を尽くす覚悟です。今後も引き続き、皆様のバイオマス部会への積極的なご支援とご協力をお願い申し上げます。
 
2005年3月吉日
(部会長としての任期は2005年1月より開始)

初代部会長 横山 伸也(産業技術総合研究所 中国センター 所長)

 さて、この度日本エネルギー学会のバイオマス部会を発足するにあたりご挨拶をさせて頂きます。
 バイオマスの研究に従事している我々にとって、バイオマスエネルギーの重要性については深く認識しており、新エネルギーとしての将来性、CO2問題への貢献、ポスト石油化学としての役割など、バイオマスはこれから益々その特性を生かした変換技術や社会システムへの組み込みなど大いに活躍の場を広げていかなければ ならないと考えております。しかし一方では、一般にバイオマスエネルギーに対する認識もいま一つであることも事実であります。例えばわが国の新エネルギーの中には、 都市ゴミはゴミ発電の原料として指定されているのに、森林系バイオマスや農産廃棄物などは新エネルギーに含まれてはいません。北欧や北米でバイオマスが新エネルギ ーとして確固たる位置を占めている状況とは大いに異なっております。米国でクリントン大統領が西暦2010年までに、バイオマスの一次エネルギーに占める割合を現時点 での3.5%から3倍に増やそうとする政策提言を行い、その予算を議会に計上している状況を見ればわが国の状況とは比較にならない程です。また、京都で開催されたCOP3以降、途上国とのCO2削減のための連携としてクリーン開発メカニズムやCO2の排出権取引などのいわゆるフレキシブルメカニズムの中で、バイオマスエネルギーの有効利用はこれから益々求められていくことと確信するものです。
 
 このような状況を踏まえて、日本エネルギー学会として、バイオマス部会を新たに設立してバイオマスに少しでも関連のある研究やビジネスを行っている方に、積極的に部会に参加して頂きたいとお願いする次第です。当面は年数回のサーキュラーを発行して、研究紹介や 国際会議の案内などを行いながら会員相互の親睦を図っていきたいと存じますが、将来的にはセミナー開催や共同研究の立ち上げなど実質的な展開を視野に入れております。このバイオマス部会のカバーする領域はできるだけ広く、植林、エネルギー変換 (メタン発酵やアルコール発酵、熱分解、発電、ガス化、油化、炭化など)、ケミカル生産、有用物質への変換、バイオマスによるCO2削減、排出権取引なども含めて考えたいと思います。
 
 幸い、このバイオマス部会の事務局的な役割を、気鋭の研究者である東京大学大学院工学研究科の松村幸彦先生がご担当して頂くことになっておりますので、活発な 活動が期待できると確信している次第です。是非、皆様のご理解とご参加を再度お願いする次第です。
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