今月のコラム
 

エコ替え?エコポイント?

 「エコ」という言葉、正直に言いますと私はあまり好きではありません。あまりにもいろいろなものの免罪符とされすぎている気がするのです。世間でいわれるエコには本当にピンからキリまで幅があります。今旬なエコネタと言えば、環境対策と経済対策として大々的に打ち出された「グリーン家電製品購入支援策」ではないでしょうか。この政策のエコ度について、思うところを述べてみたいと思います。


 2009年5月1日、環境省と経済産業省、総務省は、グリーン家電製品の購入に対し、サービスや商品と交換可能な「エコポイント」を付与する事業について、対象製品を決定しました(*1)。基準は下記のとおりです。


1.エアコン
  ・平成21年5月上旬に予定される改正後の統一省エネラベル4☆基準を満たす製品


2.冷蔵庫
  ・平成21年5月1日から実施される改正後の統一省エネラベル4☆基準を満たす製品
  ・但し、該当製品のない定格内容積400リットル以下の冷蔵庫については現時点で

  省エネレベルが最高水準にある製品(改正前の統一省エネラベル5☆基準を満たす製品)


3.地上デジタル放送対応テレビ
  ・現行の統一省エネラベル4☆基準を満たす製品
  ・統一省エネラベルの基準が設定されていない以下の製品につき、現行の統一省エネラベル   

  4☆相当の基準を満たすと認められるもの
   − プラズマ・フルハイビジョンテレビ
   − LEDバックライト液晶テレビ
   − ワイヤレス方式液晶テレビ

 特に3があいまいで対象を拡大しようという意図が透けて見えます。まあ環境ばかりではなく、地テジ対応や消費喚起も目的としているので、あまりケチはつけられませんし、「エコポイント」というものの認知度がこれで高まるのであれば、将来的にいろいろな使い道もあるでしょうから、歓迎したいとおもいます。
 しかし、それでもやはり、「エコ」と謳っている以上、ほんとうに省エネにつながるのか、その検証は必要と思うのです。そこには二つのポイントがあります。


  ・対象製品はみんな省エネ製品なのか
  ・買い替えることによって省エネになるのか

 

 統一省エネラベルに示されている星の数が今回のエコポイント付与の基準になっているのですが、星の数はそのカテゴリー内での基準を満足しているかどうかによって決まるので、必ずしも星が多いからといって省エネとは限らない場合もあるのです。たとえば、テレビでいえば、液晶テレビワイド32V型の5つ星製品の年間消費電力量(カタログ値)は86-133kWh/年です。これが、プラズマテレビワイド50V型の5つ星製品となると291-308kWh/年となります(*2)。現状家庭が保有しているテレビの消費電力量を考えると、後者に買い替えた場合、増エネになることはほぼ間違いないでしょう。いっそ年間消費電力量150kWh/年以内の製品にエコポイントをつけます、という方が、本当の意味で環境政策としては正しい気がします。(そうすると大型・多機能の高価格帯のテレビが売れないので経済政策としては×かもしれませんが)


 エアコンの場合も同様で、2.2−2.8kWの製品より4kW以上の出力の製品のほうが全体として効率が低いのです。しかも、リビングダイニングが開放的なお宅で容量の大きいものが選択されることも多いようですが、エアコンは安定状態では比較的低負荷で運転されるために、部屋に比して容量が大きいと断続運転が生じ、さらに効率が悪くなることも考えられます。よっぽどすかすかの家はさておき、小さめのエアコンをつけて立ち上がり時にちょっと我慢するほうが省エネになると思います。エアコンの効率は年々良くなっていますから、買い替えによってほぼ省エネは実現できると思います。ただ、暖房にエアコンを使わない場合は、省エネ効果はかなり小さめになるでしょう。


 冷蔵庫は24時間使用されるもので買い替えによる省エネ効果が最も大きい製品ですが、一時カタログ値と実消費電力量の大きなかい離が問題となり、カタログの測定方法が見直されるなどの経緯もあって、実のところどのくらい省エネが進んでいるかはわからないところもあります。今販売されている製品をカテゴリー別にみると、400L以上の大型冷蔵庫のほうがカタログ上では小さい消費電力量となっており、300kWh台前半という大変省エネな製品もでてきているようですが、実際はどんなものかはちょっと疑問です。過去の実測データなどから判断する限り、10年以上前の冷蔵庫を買いかえれば確実に省エネになるとはいえますが、2000年以降の製品であれば、対して変わらないかもしれません。


 結論としては、家電を新規購入する、買い替えるタイミングに来ているのであれば、このポイントは大歓迎で、エコポイント対象製品で検索できるサイトもあるので、ぜひ星だけではなく年間消費電力量(年間電気代)も気にして選んでいただきたいと思います。確実にその順番通りに省エネであるとは言いませんが、3割以上の違いには意味があると思います。まだ使える家電をエコ替え目的で買い替えることによる省エネ効果は、10年以上前の冷蔵庫、暖房目的のエアコンを例外として、比較的小さいと考えられます。


 問題は数年以内に大規模な買い替えが予想される地デジ対応テレビです。テレビは画面の大きさに比例して消費電力量が大きくなりますし、大抵買い替えとともに大型化するものですから、買い替えによって増エネとなる世帯が多いでしょう。買い替えをどう進めるかの議論が主流ではありますが、地デジチューナーを買うだけでも地デジは見られますし、画面サイズがひとまわり大きい液晶テレビに比べればブラウン管テレビの消費電力量は実はそれほど多くありません。今の画質に不満がなければわざわざ買い替える必要もなく、そのほうがよっぽどエコかもしれません。


 今回のエコポイントは、省エネとは言い難い製品にも付与されますし、買い替えによる効果を検証するわけでもないので、本当の意味でエコポイントではありません。しかし、将来的には、買い替えによるCO2削減量を政府が買い取るなど、新しい枠組みに持っていくための足掛かりになるものと思います。そのためには、われらが生活部会長も提案している通り(*3)、家庭内の取り組みによるCO2削減効果を計測し、定量化できるような仕組みが必要であると思います。
 きちんとした評価のもとで、きちんとした流通が実現した時、エコポイントは本物となり、人々が環境にやさしい行動へ取り組むための強力なインセンティブとなることでしょう。

*1 環境省グリーン家電普及促進事業 http://www.env.go.jp/policy/ep_kaden/list.html
*2 省エネ性能カタログ 2008年冬版 http://www.eccj.or.jp/catalog/index.html
*3 日経BPコラム 中上英俊の『暮らしとエネルギーと温暖化』
    http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/nakagami/index.shtml

 

 

 

(平成215月)

(生活部会委員 東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター 岩船由美子)

 

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