日本の森はなぜ危機なのか/環境と経済の新林業レポート
       田中淳夫(\760)197p 平凡社(2002.12) ISBN4-582-85133-9
佐野です/新春にふさわしい、アイデア宝庫の小本を紹介します.
------------------------------------------------------
従来の林業の延長ではない発想に満ちています.たとえば、
  新・里山林の創成(生き甲斐と環境が収穫できる)、
  貸し林(雑木林を観光・教材に貸す、牧場に貸す)、
  林・牧複合経営(健康放牧.草地の代わりになる)、
などヤフー掲示板でよく取りざたされるアイデアが、ほとんど登場.そして、それぞれの手法の長所と併せて、克服しなければならない欠点も指摘しているのが、この本のえらいところです.
  世界的には「人手が入り過伐した森林危機」が圧倒的ですが、日本では逆に「人手が入らないため荒廃する森林危機」が主なことを明確に区別して、対策を分けたのは卓見でしょう.

特に感心したのは、日本の林業はもともと、木材製造業ではなく、薪炭山の幸を定常的な稼ぎとしていて、時折、木材を生産する構造=つまり複合林業,だった.それが近年、木材バブルに乗って木材専業に統一され針葉樹植林に硬直化してしまった、という指摘です.
−−−
既に、今の日本の林産物総需要としては、木材よりもパルプの需要(チップの形が要求される)の方が多くなっています.なのに、相変わらず木材生産の林業しか考えない運営すれば、行き詰まりは当然です.(パルプ用ならば広葉樹、間伐材まで資源化できる)  さらに国民が求めている新型需要 (環境保護、豊かな生態系、快適生活の場、畜産補助)に対応して、これを経済化するプランを作って行けば、日本の森林用途には、広い地平が開けてくる.

ただし、日本林バイオマスの過半を占める「傾斜林資源」利用対策については、斬新なアイデアはなくまだまだです.  バイオマスの輸送性改善技術がいかに重いテーマか、改めて認識させられる./sano
---------目次 ((面白い項目だけ、抽出します))--------
T.森林危機の本当の姿:1)森林危機には2種類ある 4)林業不振は外材のせいか 7)森林ボラでは林業は救えない
U.林業を環境産業に変える:  1)間伐しなくても森は育つ  4)牛が下刈りする造林地
V.日本が変われば森も変わる:
1)山村ファンをつくるシステム  2)長期伐採権制度で森林経営  6)森林ベンチャーが森を救う
−−−
傾斜林資源の利用方法についてですが、重力エネルギーを使うことができないでしょうか。たとえば伐採地で細かく粉砕し、流体と同様にして、フレキシプルなパイプを通して麓まで下ろすなんて方法は取れないでしょうか/犬山の西尾.
・・・ごく小規模ですが、シュラを使って滑走・搬出する実験を地球デザインスクールが実験しました/sano.