書評009B-1005
セルロース系バイオエタノール:製造技術を食料クライシス回避のために
監修:近藤昭彦・上田充美、NTS社(2010.3)
ISBN 978-4-86043-265-2、\42,800,396P./評者=佐野 寛
ブラジルのさとうきびエタノールと、米国のとうもろこしエタノールは、澱粉→糖化→発酵という古典的技術の延長でエタノールを得て、すでに実施されている。これは「第1世代エタノール」であって、食料競合問題と、真のエネルギー収支(=獲得エタノールEy/投入エネルギーEx)に疑問がある。
そこで、「第2世代エタノール」がテーマとなる。それは原料として非食料(具体的にはリグノセルロースが主)を用い、食料より遥かに大きな資源を対象とする。だがその「糖化」は困難な課題なため、投入エネルギーExは巨大化し、真のエネルギー収支がプラスになるか否か、なお疑問がある。
本書は、セルロース系の糖化・発酵によるエタノール製造技術の国際的開発競争の第1線にある研究開発者67人の執筆による。読者は、本開発に見込みがあるか、多額の国費を投入してよいか、などを判断して欲しい/sano.
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目次(抜粋)
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(全体の構成) |
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第1編 各種セルロース原料からのバイオエタノール製造技術と課題 |
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第2編 前処理と糖化技術 |
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第3編 発酵技術 |
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第4編 濃縮・分離技術と後処理技術 |
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第5編 課題と展望 |
第1編 各種セルロース原料からのバイオエタノール製造技術と課題
第1章 非食料系・セルロース系原料からの〜/横山伸也
EPR(エネルギーprofit ratio)>1が最低必要条件。第1世代エタノールの例として、アメリカのとうもろこし、ブラジルのサトウキビ、日本のコメ、などの特徴を紹介。いずれも下記プロセスの後半のみ。
これに対して、原料がリグノセルロースとなると、プロセスが長大になる。特に、
セルロース →<破砕>→<<前処理>>→<糖化>→<発酵>→希薄alc→<蒸留,脱水>→燃料alc
<前処理>の負担が大きい。したがって、リグニンのセルロースからの除去、が本書の焦点になる。
リグニンの3構造型(グアヤシル G型;シリンギル S型;p-OHフェニル H型)の紹介、さらにそれが針葉樹―広葉樹―草本などの特長に対応することなど、基本が述べられている。
リグニンはずしの方法としては、<爆砕> <水熱> <酸糖化>(濃硫酸、希硫酸)、<アルカリ水>、<有機溶媒処理>、などの輪郭が紹介される。
第2章 エネルギー作物開発のためのイネ科草類資源〜/山田敏彦
永年生イネ科(≒牧草)は、播種不要、少肥料に耐えるなど長所がある。寒地型牧草、暖地型牧草の長所・短所比較が面白い。各種の草の生産性(乾t/ha年)一覧は、今後のバイオマス教養の基礎となるのではないか。
木質一辺倒のバイオマス観に、反省が求められる。
第3章 海水・淡水圏由来植物を原料〜/浦野直人ら
褐藻、紅藻、緑藻などは、陸上植物の分類の延長線上では予想できない性質を持っている。化学組成からいって、リグノセルロースが主成分、という概念そのものが合わない。構成多糖類が、アルギン酸などを主体とするため、基礎知識からの、見直しが必要になる。
地球規模で資源的に、大量にあるか否かについても、「収穫技術」しだいという結論になると考えられる。
第4章 農産廃棄物を原料〜/徳安健
ワラ、籾殻、麦ワラ、コ-ンスト-バ、バガス、などが代表。木質に比べて、ややリグニンが低いという長所がある。一方、多糖類が多様であり、蛋白質までが存在し、灰分も多く、個性的対応が必要。
第5章 アーミング酵母で古紙からの〜/野田ら
アーミング酵母でセルラーゼ使用量を半減し、C6,C5糖を資化できる。エタノ-ルL当たりの原料要求量は、わら6.35kg,古紙2.2kgと少ない。古紙の脱リグニン効果が効いている。
第6章 生ゴミを利用〜/木田ら
生協残飯の組成を見ると、[全糖60, 蛋白22, 脂肪16, リグニン1]。エタノ-ル資源は全糖だけで、意外に少ない。(エタノール用以外の用途に、向いているのではないか?/sano)
ごみ鮮度維持法は、妙案といえる。
第7章 リグノセルロース総合的利用〜/中村嘉利ら
リグノセルロース資源の一覧表を作り、成分分布をまとめている。竹やバガスではリグニンが多い(草本の割りには)。特に、豆殻や籾殻はリグニンが多い。
リグノセルロース前処理:4分類:@物理的、A化学的、B物理化学的、C生物的。その特徴をまとめた。
第2編 前処理と糖化技術
第1章
セルロース系バイオマス糖化に向けた前処理〜/五十嵐ら
セルロースTα,Tβ,Viの3種における疎水面へのセルラーゼ吸着の差異を巡って、アンモニア処理効果の実態を探った。
第2章
前処理と糖化の評価、プロセス最適化〜/片倉ら
発酵阻害物質(フルフラル、5-HMF)生成と熱処理効果とのtrade-off関係を追及。反応速度はセルロースの「露出度」と比例する。trade-off例を列挙したのが面白い。
@ワラの収集と保管の規模効果、A前処理効果と阻害物生成、B原料濃度と粘度(セルロース<20%)、酵素活性温度(>37℃)と酵母生育温度(<32℃)。
第3章 粉砕処理を利用した〜/遠藤
木のミクロフィブリルは、幅4nm=セルロース分子6×6本;×長さ数μ。その結果、単純粉砕>10μ限界。→湿式diskミル:5%セルロース水→粉砕→クリーム状液(フィブリル分散)△電力消費やはり大。
第4章 高温・高圧水を用いた〜/南ら
200〜300℃水でイオン積が最大になる(10―14→10―11)。300℃でセルロース溶解(冷却→再析出)
200〜230℃で[ヘミセル分解→単糖];〜280℃で遂に[セルロース→グルコース]。
第5章 白色腐朽菌の特異的リグニン分解を〜/渡辺
白色腐朽菌一般:セル・ヘミ・リグニン同時分解。「選択的白色腐朽菌」はリグニンのみ分解。実験例の多くは、共分解率の測定:「リグ=-14.5%、ホロセル=-7.8%」になっている。
第6章 イオン液体を用いる〜/神谷
イミダゾリウム+、ピリジニウム+、NR4+、等の巨大陽イオンを使い、融点を下げる。
100℃でセルロース溶解10%例。だが、セルラーゼ活性喪失。○くし型PEGでセルラーゼ活性復元。
第7章 炭素固体触媒を利用〜/原享和
炭素系SO3H酸(固体酸、濃硫酸なみの酸強度:H0=-8 〜-11)。セルロ-ス400℃部分酸化→グラフェン →100 ℃以下でスルホ化すると、◎スルホ基溶出せず、◎水・オリゴ糖自由出入り、◎疎水基も温存
第8章 分解関連酵素(リグニン分解酵素、セルラーゼ)の高機能化〜/今村千絵ら
欲しい性質=耐熱性(〜35℃)、耐酸性(〜pH4);セルラーゼの型により評価異なる。SIMPLEX法の紹介:1分子PCR →無細胞蛋白合成 →蛋白評価(各4,3,1hrで)
第9章 非可食用バイオマスからの糖化技術〜/渡部昭ら
セルラーゼ群:@CBH型:結晶セルロースを→セロビオースやオリゴ糖に。
Aエンド型EG:非晶セルロースを→糖化、
BBGL(βグルコシダーゼ):オリゴ糖 →グルコース化
セルラーゼはおおむねCBD(セルロースと結合する領域)を持つ。
産生微生物は細菌から糸状菌に到る。T.reeseiはゲノムDBが公開されており、CBH2種、EG11種、BGL10種を生産できる。
糖化作用手順の推定:EGでセル表面露出、CBHが作用して寸断、BGLが仕上げ糖化。阻害作用:CBHにはセロビオースが、BGLにはグルコースが阻害。∴併行発酵でグルコース除去が有望。
セルラーゼ回収・再利用:リグニンが邪魔(→前処理のニーズ)
第10章 カビの転写因子工学と新規前処理、ユーカリ樹皮糖化/加藤雅士ら
杉・ユーカリ樹皮糖化は未利用資源の課題。分解糖化できる麹菌を作出した。ユーカリ樹皮は厚さ2cmにもなり、柔らかい内樹皮が主で、篩部柔細胞には澱粉or蓚酸カルシウムを含み、篩部繊維はクラスタを形成して整列している。リグニンはグアヤシル型が主である。
新・前処理:CO2水熱処理200℃1時間→ナノクラック発生。酵素糖化率は上昇。2次壁は分解消失する。
第11章 デザイナブルセルロソームによる〜/田丸浩
ヘミセルロースの構造モデル図が、判りよく、お勧めである。
第12章 セルラーゼ・ヘミセルラーゼ複合体/小杉昭彦ら
嫌気性微生物が生産するセルラーゼ、ヘミセルラーゼ酵素複合体、セルロソーム。60℃好熱嫌気性菌クロストリジウムthermocellumは最強力な分解活性。骨格蛋白が分解機能モジュールを作る。SSCF併行発酵ワンポット。乳酸や酢酸を副生するが。
第3編 発酵技術
第1章 第2世代バイオエタノールの効率的生産/CBP法〜/黒田浩一ら
澱粉が60-70℃で糊化(非晶化)するのに対して、セルロース非晶化は300℃(25MPa)でやっと。分子鎖相互に強い水素結合を形成してミクロフィブリル形成。ヘミセルはセルとは水素結合、リグとはエステル結合・エーテル結合していて低濃度の酸・アルカリにより可溶化される。リグニンは疎水性が高い。
CBPプロセス:酵素生産も、SSCF清酒発酵など、アーミング技術:細胞表層工学。
澱粉→エタノル生産.酵母表面にアミラーゼを提示する。→◎培地中グルコースを低濃度に維持ok
セルロス3種のセルラ-ゼ(EG、CBH,、βGL)必要。非晶域分解→結晶域分解→オリゴ糖分解。→酵母表層提示。
ヘミセル→エタノル生産.β1,4キシランをキシラナ-ゼ、キシロオリゴ糖をβキシロシダ-ゼでキシロ-スへ。キシロ-スをXR、XDHでキシルロ-スへの変換でokに。リグニン分解.除去が必要(セルラ-ゼ吸着で阻害)。
第2章 清酒醸造技術を活用した〜/秦洋二
エタノ-ル耐性が必要になると、清酒酵母(20%耐)が出番。並行複発酵=CBPと似ている。○麹菌機能の付与→スーパ-酵母化。セロオリゴ糖(亜臨界処理)も発酵ok。安定性確保にはHELOH法。
第3章
新規細菌による連続並行発酵/梁瀬英司
Zymomonas菌、ZXymobacter菌に焦点を。酵母より生産速度はやい。キシロ-ス系、マンノ-ス系並行発酵も。組み換えZymomonas菌で。糖化液組成%:針葉樹(グルコス9.3、キシロ-ス2、マンノ-ス3);広葉樹(グルコ8.7、キシロ4.5、マンノ0.8)。
第4章
耐熱性酵母による高温エタノール発酵〜/
現在 酵母最適域=30〜35℃(SSF実施温度)なのに、.グルコアミラーゼ至適温度=50〜60℃と異なる。
もし、より高温→40℃ならば、○SSF加速可能、○コンタミ防止=菌繰り返し利用、○連続化可能。
耐熱性酵母K.marxianusDNKU3-104株。凝集性酵母開発、(遠心分離が手間なので)糖鎖結合性の蛋白フロキュリン(→他酵母表面の糖鎖へ結合する機能)を持つ。
第5章
ソフトバイオマス原料・コリネ型細菌による混合糖同時発酵〜/城島透、湯川ら
RITEバイオプロセス。コリネ型細菌はアミノ酸工業で使用された。増殖は停止、○代謝系は機能する。△coldショックに弱い。ソフトバイオマス(ワラ、コーンストーバ*)組成*%:グルコス36、ガラクトス2、キシロス22、アラビノス3、リグニン1/3.C5糖が多いが発酵できる。フェノール・アルデヒド・有機酸・4HB・フルフラル阻害少い(∵増殖阻害だから)。
第6章 耐熱性酵素による〜/奥崇ら
耐熱性酵素。Gl→エタノル変換には12種酵素が関与。20年前にScoopsが酵母の5倍速度でalc発酵成功。
大腸菌に酵素産生させ→破砕→熱処理→菌体蛋白を沈殿分離。PDC(ピルビン酸デカルボキシラーゼ)のみ60℃で失活。∴50℃で操業。アセトアルデヒド阻害を蒸発で除去。
第4編 濃縮・分離技術と後処理技術
第1章 省エネ型次世代蒸留システム〜/野田秀夫ら
@蒸気再圧縮法VRC:蒸留塔頂のコンデンサ廃止してコンプレッサにする→凝縮熱をリボイラへ。3割省エネ。
A内部熱交換式HIDic:高圧濃縮塔と低圧回収塔を併置して熱交換。6割省エネ。HIDic、2重型棚段式。外塔(回収)200mmHg,内塔(濃縮)は上圧に。エタノール1L取得の所要エネは、NEDO目標値=5000kJ/L-エタノル の半分となる。
第2章 ゼオライト膜を利用〜/近藤正和ら
無水エタノ製造用。浸透気化法PV、まだ実機なし。選択透過膜評価:分離係数α>200、透過流束=1kg/m2h。
シリカライト膜は疎水性が強く、有機液選択性を示す。水選択透過膜には、ゼオラ膜、膜厚さ=20−30μ。
第3章 超音波霧化分離を用いた〜/松浦一雄
希薄エタノ-ル液を濃縮。部分気化であり、○蒸発潜熱の1/5程度しか要らない。
第4章
各種蒸留廃液のメタン発酵を〜/木田建次ら
海外事例集:マレーシア.サトウキビ糖蜜→エタノール;蒸留残液→2相式発酵→3池貯留→ローリ→畑へ施肥。ほかに、海南島.糖蜜+硫酸で防腐;→中止。インドネシア.メタン発酵なしで→3池→ローリ→畑へ施肥。
日本.蒸留廃液、30g/L/日までは、560Lガス/kg-有機物でも安定。処理水BOD=4.3g/L;好気処理→0.4g/Lに。
RO膜分離がよい:○色度95%除去。○BOD→37mg/L;
コーンエタノール2方式=乾式ミル法(DDGS)飼料*副生、湿式ミル法(胚芽やグルテン、飼料*副生)を紹介。焼酎蒸留廃液→嫌気性流動床○0.9日
セルロース系蒸留廃液:濃硫酸糖化で:糖液→pH4調整→エタノ発酵→10倍量の蒸留残液(S=1.5g/L、TOC2%)→●H2S>1万ppmガス発生・・空気9%供給→H2S=40ppm希硫酸糖化で:1次=ヘミセル糖化液→発酵;
2次=セルロース糖化→発酵→大量の蒸留残液(BOD20g/L、N分>1g/L)→濃縮→蒸留液メタ発酵(90%はガス化)→廃液を好気処理→放流
第5編 課題と展望
第1章 国内外で導入が進む〜/
1970年代にoil-shockでガソホールが登場したが、その衰退した。環境省の導入planを紹介。
エタノール収穫量/農地(t/ha)を、サトウキビ、甜菜、ジャガイモ、トウモロコシ、サツマイモ、米、ソルガム、小麦、などの値で比較提示。ブラジルのサトウキビが断然よく、コメははるかに及ばない。
第2章 自動車産業としての〜/
バイオ自動車燃料のロードマップ[食糧系 →第2世代 →第3世代]の紹介。
U.ガソリン代替(食エタノ-ル→セルロ-スエタノール→?)
V.軽油代替(FAME → 水添分解/新日石トヨタ、Neste、BP → BTL)
難点:農業残渣=5.7Gt-乾物/年(トモロコシ幹、ワラ、バガス、パーム残渣)
林業残渣=3.4 Gt-乾物/年(林地残材、ワラ、牧草)・・・の中で、次の生産プロセスの前半(収穫・貯蔵・搬出)で 既に高価になってしまうこと。
太陽エネ→栽培 →収穫・貯蔵・搬出 →植物 →変換 →燃料油
第3章 日本がリードするバイオリファイナリー〜/
セルロース、ヘミセル、リグニンの各出口を表にする。C2 エタノ-ルから始めて、C3、C4、C5、C6 に到るまで技術的におおむね可能であるが、石油が安価であるうちは実現困難とされる。(だが、コスト的にはともかく、エネルギー的に持続可能であることは実証しておかねばならないであろう/sano)
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