特集「森林の多様な役割と機能」農林水産技術研究ジャーナル/27-5(2004.5月号)\840 ISSN0387-9240 農林水産技術情報協会
特集の中で、バイオエネルギーに関連のあるもののみを抽出して紹介します。この分野ではバイオエネルギーは脇役である傾向が強いです/sano.
------------------------------------------------------
目次
森林の多様な役割と機能/太田猛彦 p.5
森林が生物多様性に果たす役割と保全政策の動向/山根正伸 p.11
森林の地球環境保全機能/石塚森吉 p.17
土砂災害防止機能/竹内美次 p.23
水源涵養機能/服部重昭 p.28
快適環境形成機能/河合英二 p.33
森林の保健・レクリエーション機能/下村彰男 p.36
森林の文化機能/深町加津枝 p.42
------------------------------------------------------
森林の多様な役割と機能/太田猛彦
森林は100m未満の厚さだが、陸地全域の大半を覆う。森林機能の分類は、3分割できる:
[環境原理] 生物多様性、地球環境、土壌、水源、快適環境 などの保全。
[文化原理] 保健・レクリエーション、文化
[物質利用原理] 木質生産、(山菜生産、鳥獣生産; カッコ内は評者の追加意見)
著者は、さらに「規模の大小」により、これら機能の新分類を提示している。
「新・林業基本計画」では森林のゾーニングを行うが、原理・階層性を踏まえているだろうか?
1)水土保全林、2)森と人の共生林、3)資源の循環利用林
森林の機能評価: 森林の「公益的機能」の価値評価には、林業経済学では「外部経済」として間接的に評価する。しかし、保安林などの評価で皆が納得する評価法は未だにない。近年の環境経済学的対応でも、費用(C)の計測と便益(B)の計測の困難さに遭遇している。簡易総括法としては
間接的非市場調査法(代替法など)、直接的非市場調査法(CVMなど)、環境勘定(or環境経済統合勘定)、があるが、いずれも満足できる評価法にはほど遠い。
コメント: バイオマスエネルギー利用を進める場合にも、森林の「公益的機能」の価値評価が行われるが、それはしばしば、部分的な貨幣換算に過ぎないことを留意したい。/sano.
森林が生物多様性に果たす役割と保全政策の動向/山根正伸
森林は世界で34.5億ha(=地上の27%) を占めているが、1990年以降、減少率/年=0.32%である。この森林定義は「10%の最低樹冠率」(世界森林資源調査2000)により、牧草地や半砂漠と区別される。バイオマスの現有量と生産率の表(一部)。
現有量t/ha 生産率t/ha年
湿原 150 25
熱帯雨林 444 20
温帯落葉林 300 12
亜寒帯林 200 8
サバンナ 40 7
農耕地 11 7
温帯草原 16 5
低木砂漠 7 1
生物的多様性の原因は、高生産性に加えて、分解がやや制限され高い現有量が維持されることが必要。熱帯林では巨木〜低木混在での環境多様性が維持されていることによる。温帯林の動物による種の伝搬なども、多様性要因の一例である。日本でも2001年に森林・林業基本法制定によって従来の「木材生産主導」林経営から多面的機能持続へ政策転換の一歩が踏み出された。
コメント: 農林業の実態は、依然として経済評価によって動いており、「多様性の経済換算」評価が未達であると大きく転換できない。/sano.
森林の地球環境保全機能/石塚森吉
森林はCO2の吸収源(A)・放出源(B)である。
(A):光合成→リター、木材製品、(間接的に)化石燃料代替利用
(B):植物呼吸、植物分解、火災、焼却〜燃焼利用(中立?)、伐採(その後の処置により±)
最新の地球CO2収支表(一部分、下表); [陸→大気]が微少だったのは熱帯林破壊に基づく。
'80年代 '90年代、(GtC/年)
大気CO2出入り 3.3±0.1 3.2±0.1
化石燃料CO2排出 5.4±0.3 6.3±0.4
海→大気 -1.9±0.6 -1.7±0.5
陸→大気 -0.2±0.7 -1.4±0.7
日本森林のC吸収量分布図を提示。0.5〜2Ct/ha年の範囲に。ただし、成長量と伐採量でカウントするなど、問題多い。
バイオマス増加量△B=NPP(純生産量)−D(枯死・分解量)
とすると、正になるのは20年未満の若林のみになる。
バイオマス・ニッポン指針では、廃材バイオマスRを80%、未利用バイオマスUを20%活用を謳っている。Uの代表・林地残材は廃材Rの6倍あるので U>R だが、コストが1.6〜7倍かかる。/sano.
(森林の)土砂災害防止機能/竹内美次
森林の浸食防止機能は、樹冠・落枝葉による雨水直撃抑制、根系による崩壊防止、などがある。伐採により地盤補強性は失われるが、植栽により15年後に半分復活、30年後に全部復活するのが普通(図あり)。 土地利用法による年間土砂流出量比較では、 林地<草地<<耕作地<<裸地<<荒れ地 となる(図あり)。 樹種による比較では、ブナ天然林19t/haに対して、同伐採跡地が9倍、檜人工林12倍と、針葉樹林が悪い。理由は針葉樹の林床植生が貧弱なため。
コメント: 人工林の大部分は針葉樹林であり、保全貢献は期待薄い。/sano.
(森林の)水源涵養機能/服部重昭
森林3区分の中では「水土保全林」が最大である。(洪水緩和・渇水緩和機能が期待) それは森林の流量変動抑制と遅延効果によるが、計算式(下)は提案段階で、統一的・定量的な評価はまだ難しい。
P(降水量)=R+Et+Ei+Es±△S
Rは流出量、Etは蒸散量、Eiは樹冠遮断量、Esは林床面蒸発量、△Sは貯留変動量である。日本ではRと全E(年間300〜1200mm)とはほぼ拮抗するが(図あり)、多雨地域ではRが2/3、少雨地域では1/3くらいになる。貯留量(いわゆる緑のダム)は、1)土壌孔隙量(平均300mm)、2)地上の樹体、による。流域の保留量曲線からの推定では、現実には最大貯留量の半分くらいになる。流域の造林拡大は、年間流出量を減少させ、成長とともにますます減少する。樹冠遮断蒸発は全蒸発の1/4〜1/2にも及び、林齢20年ほどで一定になる。
コメント:「緑のダム」を過信してはいけない。/sano.
(森林の)快適環境形成機能/河合英二
新宿御苑(58ha)森林部の夏・晴天日の気温低下効果は4.5℃、芝生地の2倍である。(以下、略)
森林の保健・レクリエーション機能/下村彰男
森林は休息型・運動型いずれも立木密度300本/ha、が最適(明るい舞台で活動自由度が大きい森)となる(図あり)。
コメント:水土保全林や循環利用林の最適化とは、かなり食い違ってくる点に注意。/sano.
森林の文化機能/深町加津枝
森林の里山評価。丹後半島宮津市世屋地区、琵琶湖西・志賀町八屋戸、嵐山景観、などを例示。里山構造が、
集落/耕作地/採草地/薪林/炭林
という順に並んでいて、食料、生活材、農資源(流通図あり)の確保に使い分けられることを示す。この順はまた、[近→遠距離]、[短周期→長周期]順でもある。薪林周期は20〜40年、炭林周期は40〜60年、である。/sano.
−−−